SL全般検査とは

SL全般検査とは

SL全般検査とは、車両すべての機器類を取り外し、全般にわたり細部まで検査を行うことで、略して「全検」とも呼ばれます。
定期検査としては最も大がかりで、様々な修繕及び分解・検査・整備のほか、車体の再塗装なども同時に行い、運行できるようにしています。
蒸気機関車の場合、現在は半年近くの時間を要することがほとんどですが、今回は修繕に時間を要するため約1年がかりとなる予定です。

Qどれくらいの頻度で実施される検査なの?

秩父鉄道では8年に1回程度実施しています。前回は、2011年10月から2012年3月までの間で実施されました。

Qどんな作業が実施されるの?

蒸気機関車の部品をすべてはずし、ひとつひとつ問題がないか検査していきます。問題が発見された場合には、修復作業などが行われます。

Qどこで作業が実施されるの?

秩父鉄道の場合、自社内では全般検査が行えないため、JR大宮総合車両センターに蒸気機関車を輸送し、検査をお願いしています。

SL全般検査2020の記録

2019年12月25日 SL輸送の事前準備

広瀬川原車両基地内でSLを輸送するための事前準備を行いました。
すでに火を落としてあるので、運転席の中も熱くありません。

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SLのすすをきれいに掃除しました

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SLの「顔」が開くとこんな感じなんです

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よく見ると細かい部品にも「C58363」の文字


2020年1月31日 SL輸送の最終準備

広瀬川原車両基地内でSLを輸送するための最終準備を行いました。
蒸気機関車が全般検査を受ける工場へ運ぶ回送時は、回送時に使用しない部品等は麻縄で締め、一部の部品は取り外します。
炭水車の石炭はすべて降ろし、取り外した部品を炭水車の石炭庫に載せます。

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輸送時に使用しない部品は空の石炭庫へ

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麻縄で固定する方法は今も昔も変わりません

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運転席の中もしっかり固定します


2020年2月17日 いよいよ広瀬川原車両基地を出発!

電気機関車にけん引されたSLは、広瀬川原車両基地を出庫し、武川駅まで回送となりました。
しばらく広瀬川原車両基地とはお別れです。

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電気機関車としっかりと連結します

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今回のパートナーはピンク色のEL504

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SLは武川駅で一晩過ごしました


2020年2月18日 武川駅から熊谷貨物ターミナル駅へ

まだほの暗い早朝から作業が始まりました。明るくなってくるころ武川駅を出発し、熊谷貨物ターミナル駅へ。
これ以降は秩父鉄道から離れての検査が始まっていきます。

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早朝から作業は始まりました

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晴天に恵まれ気持ちよさそうです

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SLは後ろ向きで引っ張られていきました

SL機関士からのメッセージ

 SLの魅力はもくもくと煙を出しながら豪快に走り抜ける力強さと迫力にあると思います。運転席では機関助士が石炭を焚べて蒸気を作り、機関士はその蒸気を効率良く使い運転をします。天候等その時々の状況を考慮しながらの操縦はとても難しいですが、無事に終点まで辿り着けたときにはとてもやりがいを感じます。また、SLは古い乗り物ですので機器の操作などは丁寧に扱うように心がけています。このSLを後世に残していく事は私たちの使命でもあります。
 鉄道産業の原点である蒸気機関車。ぜひ、乗って、見て、古い歴史を訪れる事により、新しい発見があるかもしれません。お待ちしております。
(機関士 岸 貴仁)

秩父鉄道のSL運転に対する思い

秩父鉄道では、SLの復元運行を実現してくださった埼玉県北部観光振興財団を主体とした沿線自治体他の皆様、いつも手を振って応援してくださる沿線にお住いの皆様、そしてご乗車くださるお客様等、多くの方々に支えられ、30年以上にわたってSLの運転を続けることができています。今ではSLは秩父鉄道になくてはならない観光列車となりました。今後も「都心から一番近い蒸気機関車」を、地域の財産として永く運行を継続し、地域経済社会の活性化と観光振興に貢献できるよう努めてまいります。